『お金の不安という幻想』(著:田内学、朝日新聞出版) を読んだ。 本書を手に取ったきっかけは、愛聴しているPodcast『News Connect』の土曜版だった。著者である田内氏の「お金の本を書いてほしいと言われたが、お金のことを書かないお金の本を書きます」という言葉に「その反応おもろいな!」と強く興味をもったからだ1。
書店で実物を手に取ると、いわゆる資産形成の「ハウツー本」からは一歩も二歩も踏み込んだ大局的・本質的な内容を含んでいるように見て取れたので、購入を決めた。「お金がなくて不安」「お金があれば安心」という会話では見えてこない、氷山の本体を知りたい人は手に取ってもらいたい本だ。
「2000万円」あっても、働く人がいなければ無意味である
私にとって、本書の核は第3部にあった。お金はあくまで「ツール(媒体)」であり、その価値は「働いてくれる誰か」の存在が前提である。みなそれに気付いていないあるいは気付かないフリをしているのだ。
お金の問題へのすり替え ... 数年前の「老後2000万円問題」が騒がれているが、真の問題は金額の多い少ないではない。20年後、30年後に、そのお金を払ってサービスを提供してくれる「働き手」がいなくなっていることこそが本質的な危機である。
物価高で高くなった100円はどこに消えた? ... モノの値段が100円高くなっても、その100円は誰かの報酬になるはず。それなのに給料が上がらず物価だけが上がっていく。その理由2は、100円が日本ではなくて海外の誰かにわたっているからだ。
極端だからこそわかりやすい「ピラミッド建設国家プロジェクト」 ... GDPさえ増えればいいという考えへの警鐘として、「国が1兆円かけてピラミッドを建設するプロジェクトを打ち立てたら」のたとえが挙げられている。1兆円予算のこの巨大プロジェクトが動き、雇用が生まれて働く人の給料も高くなって経済指標が改善したとしても、ただでさえ不足している貴重な労働力が「意味のないもの」に割かれれば、水道や道路といった生活インフラの整備に人が回らなくなる。経済指標が国の豊かさを反映しない、とても分かりやすいたとえだと思った。
残された問い:人手があれば世界に求められるモノ・サービスは作れるのか
「お金の不安」という言葉でひとくくりにされて本質が見にくくなっている問題の霧を晴らしてくれるという点では、期待以上の内容だった。不安の正体はお金そのものではなく、社会構造や労働力の不足にあるという指摘には深く納得した。
一方で、少し物足りなさを感じた部分もある。本書では「日本人は世界が欲しいものを作れなくなっている」という現状にも触れているが、なぜそうなってしまったのかという深掘りについては物足りなさを感じた。このトピックについては、自分なりにさらに調べて考えを深めていきたいテーマだ。
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「老後2000万円問題」 のソース(情報源)である、金融庁のウェブサイトとレポートはこちら。
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https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
News Connect 田内学さんのインタビュー回
私がこの本を知るきっかけとなった Podcast エピソードはこちら:
News Connect【土曜版 #50】円安との付き合い方。高市政権が経済に与える影響は?(ゲスト:田内学さん)
