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『入門 日本美術史』(山本陽子): 親しみやすいたとえを交えて歴史の流れと重要美術家を追う

『入門 日本美術史』(山本陽子筑摩書房) を読んだ。『西洋美術史入門』(池上英洋、ちくまプリマー新書) とセットで本棚に置いておきたい本だ。

美術館に行けていない。最近訪れて記憶に残ったのは2024年初夏の皇居三の丸尚蔵館の開館記念展で、既に半年以上前である。
皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび」 特設ページ

狩野永徳の唐獅子、酒井抱一の十二ヶ月花鳥図、若冲の群魚図など、満腹になるコレクションであった。しかし、日本美術のつながりについてほとんど分かっておらず、それを知ればより楽しめるのではないかと思っていた。西洋美術史入門を読み、山田五郎の大人な教養チャンネルで画家の性格や人生を知って西洋美術の楽しみ方がぐっと広がっていたので、これをぜひ日本美術でも味わいたいと思っていたところ、ちょうど良さそうなこの入門書があった。

私のように、美術・日本美術に興味はあるものの絵・彫刻を点でしか見てきておらず、流れを知りたいと思っている人にはうってつけの本である。まじめな文体のなかで、分かり易いたとえを交えているのがとても読みやすい。江戸時代の町娘をテーマにした浮世絵 (というジャンルで良いのだろうか不安だ) を「さしずめ読者モデルと言ったところか」と説明してくれるので非常にイメージしやすかった。

日本美術は模倣の時代と独自美術の醸成を繰り返しているという見方が、大きな流れを理解するガイドラインになる。こういうことを小中学校でも教えてくれれば、単発の「飛鳥文化」「安土桃山文化」の記憶力ゲームではなくなり、興味を抱く子も増えるのではないかと思うが、これは大人になったからこそ抱く気持ちなのか。

特定の章で鮮やかに記憶に残ったのは狩野派の章である。隔世で天才を生み出している、そのあいだの世代は次世代のプロデュースに徹底する。関ヶ原の戦いでは家を3つに分け、どちらが勝っても共倒れになっても誰かは時流に残るという戦略をとる。いやあ、すごい家系である。天才の裏に戦略あり。

日本美術や美術展に対するアンテナ感度が、少し上がって嬉しい。山田五郎チャンネルで紹介されている、風神雷神図や高橋由一(ゆいち)「鮭」の回など、今なら少し深い見方が出来そうだ。

関連する書籍、動画

西洋美術史入門』(池上英洋、ちくまプリマー新書) も、本棚に置いておきたい。


山田五郎の大人の教養チャンネルで、日本美術を取り扱っている回は少なくない。風神雷神図の回がとっかかりとしては良いと思う。


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