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映画『シャッター アイランド』- 映像美と音楽が増幅する緊張感

「観るべきミステリー」の記事から

何かしらの「観るべきミステリー」記事で読んで、見たい映画リストに長らく入っていた『シャッター アイランド』(2010年公開、監督マーティン・スコセッシ、主演レオナルド・ディカプリオ) を観た。

映像と音楽の不気味さが記憶に残り、爽やかな解決では結ばれない、印象深い作品だった。

音楽と映像の薄暗い美しさ

舞台が1950年代であるからそれに合わせるためだと思うが、フィルムっぽい暗い映像が良い雰囲気を出している。そして、音楽である。随所にクラシック音楽と現代音楽の間(はざま)にあたりそうな、決して有名なきらびやかな作品ではないが散りばめられている。そしてテーマ曲というのだろうか、あの低音弦楽器のゆっくりとした葬送行進曲のようなフレーズは忘れられない。調べてみると、クシシュトフ・ペンデレツキ Krzysztof Penderecki の交響曲第3番である。改めて聴いてみると、よくぞこれを持ってきたという感じだ … 不気味である。そして Max Richter - On the Nature of Daylight も、悲しくて美しい。サウンドトラックを追いかけて、自分の音楽の幅を広げる楽しみができた。

劇中で直接的に作曲者と作品名に言及する、マーラーのピアノ四重奏も、面白い。マーラー16歳の作品で、ウィーン音楽院の作曲科の試験のために作られ、1楽章のみが残り、マーラーの室内楽としてもこれ1曲だそうだ (wikipedia 日本語版より)。そしてマーラーは(ヒトラーが好んだワーグナーとは異なり)ユダヤ系の作曲家であることに加え、この四重奏曲が積極的に録音されたのは1970年代以降だという話もある。ここまでの知識はなかったので私は初見で気づくことはできなかったが、このマーラーの曲で現実と夢と記憶を行き来しているということは鍵になっていて、その曲調もマーラーっぽくない。他の選曲にも仕掛けや背景があるかもしれない。

映像で言うと、ダッハウ強制収容所の凍えるような寒さを感じさせるシーンと、主人公の家の火事の回想シーンがとても印象深い。レトロな雰囲気を維持しつつ、現代の映像技術がミックスされていて、悲惨な場面であるのに綺麗だなという奇妙な感想も抱いてしまう。

最後の場面の意味は

本作はミステリーであるから、「ほんとはどういうことなんだろう」と推理しながら観ることになる。私も例外ではなく、観ている途中で「こっちの可能性もあるな」という筋が見えてきた。読み通りであったなと思いきや、主人公の最後の場面で「え?どういうこと?」と放り出されてしまった。何通りかの解釈が出来るようだが、大戦と戦後処理の悲惨さがこの映画・原作の強い背景にあることは間違いないようだ。

物語、映像、音楽を味わえる、とても良い映画だった。繰り返しになるが、良い画面と音響環境で観ることをおすすめする。


CC BY-NC 4.0

この記事は CC BY-NC 4.0 ライセンス(表示・非営利)で公開しています。

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